あえてディスプレイを外すという選択
ドイツ・ベルリンで開催された家電見本市「IFA 2026」では、AI搭載のスマートグラスがずらりと並び、各社が「インテリジェント」という言葉を競うように使う光景が広がりました。
そんな中、中国のRokidが展示した「AI Glasses Style」は、あえてディスプレイを持たないという逆張りの設計で存在感を放っています。
多くのAIグラスが「レンズに情報を映し出す」方向へ進化を続ける一方、Rokidが選んだのは「表示機能を削ぎ落とし、AIとの音声対話に特化する」というアプローチです。
この発想の転換が、IFA 2026の会場でも注目を集める理由になっています。
重さ38.5g、普段のメガネ感覚で使える軽さ
AI Glasses Styleの最大の特徴は、その軽さです。
本体重量はわずか38.5gと、一般的なメガネとほとんど変わらない水準に抑えられています。
ディスプレイや複雑な光学系を持たないことで、長時間かけていても負担になりにくい設計を実現しました。
度付きレンズにも対応しており、遠近両用や色付きレンズといったオプションも選べます。
レンズは薄型で傷つきにくい加工が施されており、「AIガジェット」である以前に、日常的にかけるメガネとして成立させることを重視した作りになっています。

最大76言語のリアルタイム翻訳機能
AI Glasses Styleが備える機能の中でも特に注目したいのが、最大76言語に対応するリアルタイム翻訳です。
旅行先で見かけた看板やメニューの文字を、音声を通じてその場で翻訳できるほか、会話の翻訳にも対応しています。
翻訳結果は、つる(テンプル)部分に内蔵されたスピーカーから音声で流れる仕組みで、画面を見る必要がありません。
音声でのAIとのやり取り自体は12言語に対応しており、日本語や中国語(台湾・香港)、ドイツ語、スペイン語、フランス語、韓国語なども選べます。
旅行中に一時的にスマートフォンを取り出す手間を省き、視線を上げたまま会話や案内表示とやり取りできる点は、海外旅行が多い層にとって魅力的なポイントになりそうです。
12MPカメラと選べるAIモデル
AI Glasses Styleにはソニー製の12MPカメラが搭載されており、写真・動画の撮影に対応しています。
SNS向けの縦向き動画にも対応しているのが、今どきのガジェットらしいところです。
搭載されるAIアシスタントは、ChatGPT・Gemini・Qwen・DeepSeekの中から選べる仕様になっており、ユーザーが普段使い慣れているAIサービスをそのままグラス上で呼び出せます。
バッテリーは210mAhで、日常的なAI利用・音声・カメラ機能を合わせて最大12時間使用可能とされています。
ディスプレイ搭載型と比べると見える「軽さ」の差
AIグラス市場を語るうえで比較対象になるのが、Metaが展開する「Ray-Ban Display」です。
こちらはレンズに情報を映し出せる本格的なディスプレイを搭載していますが、その分、本体重量や価格は大きく変わってきます。
| 項目 | Rokid AI Glasses Style | Meta Ray-Ban Display |
|---|---|---|
| ディスプレイ | なし(音声特化) | あり(レンズに情報表示) |
| 本体重量 | 38.5g | 69g |
| 価格 | 299ドル | 799ドル |
| 翻訳機能 | 最大76言語対応 | 対応(表示付き) |
同じ「AIグラス」というカテゴリでも、ディスプレイの有無だけで重さは倍近く、価格は2.5倍以上の差が生まれています。
Rokidが「音声とAIの対話だけに絞る」ことで実現した軽さと価格は、この比較を通すとより際立って見えてきます。
編集部コメント:「引き算の設計」が次の主戦場になるか
スマートグラス市場はここ数年、Meta社のRay-Banシリーズを筆頭に「いかに多機能を詰め込むか」という方向で競争が加速してきました。
そうした中でRokidが示した「ディスプレイを持たない」という選択は、あえて機能を絞ることで軽さと日常使いのしやすさを両立させる、一種の逆張り戦略と言えます。
日本の読者にとっても、海外旅行や出張の際に「スマホを取り出さずに翻訳できる」という利便性は分かりやすい価値です。
AIグラスというと「未来的だが日常使いには大げさ」という印象を持たれがちですが、こうした軽量・音声特化型の登場によって、AIグラスが特別なガジェットから日用品へと近づいていく可能性を感じさせます。
価格と入手のしやすさ
AI Glasses Styleは299ドル(日本円で4万5千円前後)という価格設定で、2026年1月のCES 2026で発表・発売が始まりました。
その後もIFA 2026で改めて展示され、継続的に注目を集めていることが今回の話題性につながっています。
ハイエンドなARグラスと比べると手が届きやすい価格帯に収まっており、「AIグラスをまず1台試してみたい」という層にとっては入り口になりやすい製品と言えそうです。
開封から使い始めまでの流れ
海外製のAIグラスを個人輸入で入手する場合、開封後の初期設定にひと手間かかることが一般的です。
AI Glasses Styleも例外ではなく、専用アプリとのペアリングやAIモデルの選択、翻訳機能の言語設定といった初期セットアップが必要になります。
度付きレンズを希望する場合は、フレームだけを先に購入し、後からレンズを現地の眼鏡店やオンラインサービスで加工してもらう流れが一般的とされています。
普段メガネをかけている人ほど、このあたりの手順を事前に調べておくと、届いてから戸惑わずに済みそうです。
バッテリー駆動時間が12時間である以上、丸一日の旅行で使い切ってしまう可能性もあるため、モバイルバッテリーを携行しておくと安心して使い続けられます。
日本での展開は今後の動向次第
現時点でRokidの製品は、主に海外(欧米・中国市場など)を中心に展開されており、日本国内での正規販売については明らかになっていません。
Rokidはこれまでにもディスプレイ搭載型の「Rokid Glasses」シリーズを展開してきた実績があり、AIグラス分野での存在感は着実に高まっています。
翻訳機能に特化したガジェットは、インバウンド需要の高まる日本において親和性が高いジャンルでもあります。
今後、日本市場向けの取り扱いや技適対応が進めば、旅行や接客の現場での活用シーンも広がっていきそうです。
参照元:(Yanko Design「Smart Glasses, Robot Dogs, AI Tamagotchis, and Desk-Sized Supercomputers: How IFA 2026 Redefined Robots」ほかRokid公式サイト)
https://www.yankodesign.com/2026/09/04/smart-glasses-robot-dogs-ai-tamagotchis-and-desk-sized-supercomputers-how-ifa-2026-redefined-robots/



