125年の歴史で初めての電気自動車
英国の名門自動車メーカー、ベントレーが2026年9月23日、ブランド史上初となる完全電気自動車「トルカル(Torcal)」を発表しました。
ガソリンエンジンとW12気筒エンジンで知られてきたベントレーが、ついに電動化の本丸に踏み出した格好です。
トルカルはSUVタイプのモデルで、全長は約5メートル。
実はこれ、ベントレーの4ドアモデルの中では最も短いボディサイズだといいます。
コンパクトになった分、都市部での取り回しのしやすさを意識した設計とみられます。
888馬力、航続375マイルというスペック
気になる性能面は、最高出力888PS、113kWhのバッテリーを搭載し、航続距離は375マイル(約600km)とされています。
急速充電は最大400kWに対応し、短時間での継ぎ足し充電にも配慮されています。
トルクの数値も見逃せません。
995.7フィートポンド(約1,350Nm)というベントレー史上最大のトルクを発揮するとされ、電動化によってむしろ走行性能が底上げされていることがうかがえます。

それでも荷室はしっかり確保
コンパクトなボディながら、実用性も犠牲にしていません。
リアの荷室容量は460リットル、さらにフロント側にも90リットルの収納スペース(フランク)を備えています。
内装には、ベントレーの伝統素材でもあるピュアメリノウールのトリムが採用されており、電動化しても「らしさ」を残す仕上げになっています。
価格は17万3,000ポンド、ベントレー史上もっとも手頃
もうひとつの大きなポイントが価格です。
英国での価格は17万3,000ポンド(約2,300万円)からとされており、これは現行のベントレーのラインナップの中で最も手頃な1台にあたるといいます。
高級車ブランドとして知られるベントレーが、あえて価格を抑えたモデルを電動化第1弾に据えた背景には、若い世代や「ベントレーは初めて」という新規顧客層の取り込みを狙う戦略があるとみられています。
新規顧客の取り込みを狙う戦略
ベントレー自身も、トルカルによって若い世代の顧客や初めてベントレーを購入する層にアピールしたい考えを示しています。
これまでベントレーのオーナー層といえば、W12エンジンの重厚なサルーンやクーペを好む中高年層のイメージが強くありました。
そこへ、都市部での使いやすさを意識したコンパクトなSUVボディと、電気自動車らしい静粛性・加速性能を組み合わせることで、これまでベントレーに縁がなかった層への接点を作ろうとしているわけです。
ラグジュアリーブランドがEVを「エントリーモデル」として位置づける動きは、他の高級車メーカーにも共通するトレンドといえます。
編集部コメント:ラグジュアリーEV競争の新たな一手
ベントレーの電動化参入は、ポルシェやロールス・ロイス、ベンツのマイバッハといった競合ラグジュアリーブランドがすでにEVを投入している状況を踏まえると、「遅れてきた本命」という見方もできます。
とはいえ、888馬力・航続375マイルというスペックは、後発だからこそ実現できた完成度の高さともいえそうです。
日本の富裕層向けカーマーケットでも、近年は環境意識の高まりから電動ラグジュアリーカーへの関心が着実に高まっています。
トルカルが日本市場にいつ、どのような形で上陸するかは今後の発表を待つ必要がありますが、「ベントレー初のEV」という話題性だけでも、国内の輸入車ファンの間で注目度は高まりそうです。
高級車ブランドの電動化競争が本格化
ベントレーの親会社であるフォルクスワーゲングループは、グループ全体で電動化を推進する方針を掲げており、トルカルはその一環に位置づけられます。
同グループ傘下のポルシェやアウディがすでに複数の電気自動車を展開している中、ベントレーが本気の1台を投入したことで、ラグジュアリーEV市場の競争はさらに激しさを増しそうです。
400kWという急速充電性能も、長距離ドライブを楽しむユーザー層を意識した設計といえます。
高級車だからこそ「待たされない」体験が重視される中、充電インフラの整備状況とあわせて、今後の実際の使い勝手にも注目が集まります。
今後の展開に注目
トルカルの発表を皮切りに、ベントレーは今後もモデルラインナップの電動化を進めていく見通しです。
伝統的な内燃機関モデルと電気自動車がしばらく併存する時期が続くとみられますが、少なくとも「ベントレー=ガソリン」というイメージは、今回の発表で大きく塗り替えられることになりそうです。
自動車業界全体を見渡しても、ラグジュアリーブランドの電動化は避けて通れない流れになっています。
トルカルがどれだけの反響を呼び、実際の販売にどうつながっていくのか、今後の動向を引き続き追っていきたいところです。
「エントリーモデル」戦略という業界の共通解
高級車ブランドが電気自動車を「これまでとは違う顧客層への入り口」として位置づける動きは、ベントレーに限った話ではありません。
ポルシェが「タイカン」で新しい顧客を取り込み、メルセデス・ベンツも「EQ」シリーズで若年層へのアプローチを図ってきた経緯があります。
ベントレーが今回、あえて最も手頃な価格帯にトルカルを据えたのも、こうした業界全体の流れを踏まえた判断とみられます。
ブランドの伝統を守りながらも、新しい顧客層との接点をどう作るか。
今回の発表は、ラグジュアリーブランド各社が直面する共通の課題への、ベントレーなりの回答といえそうです。
日本での正規販売網はすでに存在
ベントレーは日本国内にも正規輸入代理店網を持っており、東京・大阪・名古屋をはじめとする主要都市に正規ディーラーを展開しています。
そのため、トルカルが日本市場に投入される際も、既存の販売・アフターサービス網を通じて対応される可能性が高いとみられます。
充電インフラの整備状況など課題は残るものの、都市部の富裕層を中心に、環境性能と伝統的な高級感を両立させたトルカルへの関心は日本国内でも高まっていきそうです。
今後、日本への正式な導入時期や価格が発表されるタイミングにも注目したいところです。
内燃機関との共存はしばらく続く
ベントレーはトルカルの発表によって電動化への本気度を示しましたが、だからといって従来のW12エンジン搭載モデルをすぐに廃止するわけではありません。
むしろ当面は、内燃機関モデルと電気自動車が並行してラインナップされる過渡期が続くとみられています。
顧客の好みや各国の環境規制の進み具合に応じて、購入時に動力源を選べる状態がしばらく続くことは、伝統を重んじる既存顧客にとっても安心材料になりそうです。
電動化と伝統の両立という難しい舵取りを、ベントレーがどう進めていくのか引き続き見守りたいところです。
参照元:(Bloomberg「Bentley Unveils First Electric Car, a Merino-Lined Luxury SUV」ほかElectrek・Robb Reportも報道)
https://www.bloomberg.com/news/articles/2026-09-23/bentley-unveils-first-electric-car-a-merino-lined-luxury-suv



