ステーブルコイン発行元Circleと取引所Hyperliquid、EU規制『MiCA』の見直しを要求 準拠銘柄はわずか3つ

仮想通貨

準拠できているのは上位30銘柄中わずか3つ

USDCの発行元であるCircleと、分散型取引所のHyperliquidが、EUの暗号資産規制「MiCA(ミカ)」について、欧州委員会に見直しを求める要望を提出しました。

その背景にあるのが、現行ルールのもとで規制に準拠できているステーブルコインがほとんど無いという実態です。

上位30のステーブルコインのうち、MiCAに準拠しているのはUSDC・USDG・EURCの3銘柄のみとされています。

Circleが問題視する”銀行預金比率”

Circleが特に問題にしているのが、準備金の持ち方に関するルールです。

MiCAでは、電子マネートークン(ステーブルコイン)の発行者に対し、準備金の少なくとも30%を銀行預金として保有することを求めています。

発行量が大きく「重要」と分類される銘柄では、この比率が60%まで上がります。

Circleはこの銀行預金の義務的な保有比率を見直し、準備金の流動性に応じたルールへ切り替えるよう提案しています。

あわせて、欧州と欧州以外の関連会社が連携して発行する仕組みを維持できるようにすることも求めています。

規制文書とデジタル通貨のアイコンが並ぶオフィスのデスク

Hyperliquidが求めるのは”分類の変更”

一方のHyperliquidは、少し違う角度から要望を出しています。

同社が運営する「Hyperliquid Policy Center」は、暗号資産の無期限先物(パーペチュアル)を、MiCAではなく、EUの既存の金融商品ルール「MiFID II」の中の派生商品として扱うよう求めています。

MiFID IIは2014年に成立した、金融商品全般を対象とする既存のルールです。

パーペチュアルをこちらの枠組みで扱うことで、暗号資産特有の規制に縛られずに取引を提供できるようにしたいという狙いがあるとみられます。

欧州委員会のMiCA見直し協議が背景に

今回の要望は、欧州委員会が進めているMiCAの見直しに関する協議に対する回答として提出されたものです。

2026年は、ステーブルコイン規制が「法律を作る段階」から「実際に運用し、問題点を洗い出す段階」へ移った年だとも言われています。

米国でもGENIUS法の規則づくりが進むなど、世界各国でステーブルコイン規制の実務面での調整が本格化しています。

欧州でのこうした動きも、その流れの一部といえます。

編集部コメント:規制と実務のズレをどう埋めるか

新しい技術に対して規制を作るとき、理想的なルールと実務上の負担とのあいだにズレが生まれるのはよくあることです。

MiCAの銀行預金比率のルールも、資金の安全性を重視した結果、実際に準拠できる銘柄がほとんど無いという状況を生んでしまったようです。

CircleやHyperliquidのような業界の当事者が、規制そのものの見直しを公式に要望するというのは、単なる反発ではなく、実務に即したルール作りへの参加とも読めます。

今後、欧州委員会がどこまでこの要望を取り入れるかが注目されます。

MiCAが生まれた経緯

MiCAは「Markets in Crypto-Assets」の略称で、欧州連合が暗号資産市場を統一的に規制するために導入した枠組みです。

加盟国ごとにルールが分かれていた状態を解消し、利用者保護と市場の透明性を高めることを目的に整備されました。

ステーブルコインに関する部分は特に厳格に作られており、発行者が破綻した場合でも利用者が資産を取り戻せるよう、準備金の持ち方に細かい規定を設けています。

今回問題になっている銀行預金比率のルールも、こうした利用者保護の発想から生まれたものです。

CircleとHyperliquid、それぞれの立場

Circleは、ドルに価値を連動させるステーブルコイン「USDC」の発行元として、世界的に大きな存在感を持つ企業です。

規制への対応コストが直接ビジネスに影響するため、実務的に運用可能なルールへの見直しを積極的に働きかける立場にあります。

一方のHyperliquidは、ブロックチェーン上で稼働する分散型の取引所です。

パーペチュアル(無期限先物)という、現物を保有せずに価格変動から利益を得る取引手法を主力商品としており、その取引をどの規制の枠組みで扱うかによって、提供できるサービスの範囲が大きく変わってきます。

立場の異なる2社が同じタイミングで声を上げたことは、業界全体がMiCAの実務上の課題を強く感じている証ともいえそうです。

世界的なステーブルコイン規制の動き

欧州でMiCAの見直しが進む一方、米国でもステーブルコインに関する「GENIUS法」の規則づくりが本格化しています。

各国・地域がそれぞれのペースで規制の実務を整えている状況は、ステーブルコインという新しい金融商品が、既存の金融規制の枠組みにうまく収まりきっていないことの表れだと考えられます。

今後、こうした規制が国際的にどこまで整合していくかによって、ステーブルコインがグローバルな決済手段としてどれだけ普及していくかも左右されそうです。

業界団体や発行企業からの意見が、実際の制度設計にどこまで反映されるのか、引き続き注目されるポイントです。

規制と技術革新のスピードの差

ステーブルコインや暗号資産の技術は、既存の金融サービスよりも速いスピードで進化を続けています。

規制の整備がその速さに追いつけないことは珍しくなく、今回のMiCAのケースも、ルールが作られた時点では想定しきれなかった実務上の課題が、あとから浮かび上がってきた一例といえます。

技術の進化に合わせて規制を柔軟に見直していく姿勢が、今後のステーブルコイン市場の健全な発展にとって欠かせない要素になりそうです。

日本の仮想通貨業界にとっての位置づけ

日本でも暗号資産やステーブルコインに関する制度整備が進んでいますが、海外の規制動向は国内の議論にも影響を与えることが少なくありません。

MiCAのような先行する規制の実態と、そこで浮かび上がった課題は、日本の制度設計にとっても参考になる事例といえます。

ステーブルコインの国際的な普及が進むなかで、各国・地域の規制がどのように整合していくのかは、今後も注視しておきたいテーマです。

準備金ルールが実務にもたらす負担

銀行預金として準備金の一定割合を保有するという規定は、安全性を重視する発想としては理解しやすいものです。

しかし実際の運用では、発行量が大きくなるほど必要な預金額も膨らみ、銀行側の受け入れ余地や金利条件との調整が難しくなるという課題が指摘されています。

Circleのような大手発行者であっても対応に苦慮している状況は、新興のステーブルコイン発行者にとってはさらに高いハードルになっていると考えられます。

規制の目的と実務上の実現可能性のバランスをどう取るかが、今回の見直し協議の核心部分になりそうです。

参照元:crypto.news「Circle urges MiCA changes as only 3 of top 30 stablecoins comply」
https://crypto.news/circle-urges-mica-changes-as-only-3-stablecoins-comply/

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