人間の生活に入り込んだ自然のデザイン

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私達人間が何かをデザインする際に、自然の中からそのデザインを着想するというのは珍しくない話である。それは当然といえば当然で、自然界の植物や動物が今も存在しているのはそうした自然が作り出したデザインがそのものに長所を与えているのだから、それを見習わない手はないのである。今日はそうした私達の生活に入り込んだ自然のデザインを5つ取り上げて見ていきたいと思う。

1.日本の新幹線

例えば日本の新幹線のうち、500系のぞみはそのデザインにあたって2つの動物を参考にしていることをご存知だろうか?その動物とはカワセミとフクロウである。500系新幹線の先端部分はまるでロケットのように先端に向かうにつれて鋭くとがっていくが、このデザインはカワセミの嘴を参考にしているといわれ通称「カワセミ新幹線」とも呼ばれている。時速300kmでの運行とトンネル通過時の衝撃音緩和のためにカワセミの嘴の形状が参考にされたという話である。一方のフクロウについてはその羽の構造が翼状のパンダグラフに応用されており、高速運転時にパンダグラフから発生する風切り音を低減することに役立っている。

 

2.メルセデス・ベンツ・バイオニック(Mercedes-Benz Bionic)

「メルセデス・ベンツ・バイオニック(Mercedes-Benz Bionic)」はメルセデス・ベンツが2005年に発表したコンセプトカーの一種で、この車のボディ形態が参考にしたのは熱帯魚のミナミハコフグ。低い抵抗係数を持つ胴体形状と、外骨格の強固さに目を付けた結果このような特徴のある車が出来上がったという話である。

 

3.飛行機の翼

言うまでもないことだが、飛行機の翼は鳥の羽を参考にデザインされてきた。元々空を飛ぶ鳥を見て人間は空を飛びたいと願ったのだからそれは当然だろう。太陽に近づきすぎて落下したイカロスは蝋で固めた鳥の羽で空を飛ぼうとしていた。また1903年に有人動力飛行に成功したライト兄弟は飛行機の開発にあたってハゲタカの翼の形状を研究したという。最近では飛行の際に羽の角度を変えるアマツバメを参考に、翼の形を変えられる小型飛行機の開発も進められているという話である。

 

4.タービンのブレード

タービンのブレードが何から着想を受けているかみなさんはお分かりだろうか?実は参考とされているのはクジラの胸ビレの前縁にある”こぶ”。水中のクジラはこの”こぶ”のおかげで急角度でもなんなく潜行できると言われている。カナダのトロントにあるホエールパワー社はこのくじらの”こぶ”に着想を受け、効率の高い出力を持つタービンを開発すると共に騒音の少ないタービンの開発を進めている。

 

5.補聴器

実はハエの構造が補聴器の開発に貢献するという話がある。通常音を認識しその音の方向と距離を把握するには2つの耳の距離が重要だと言われている。ところがオーミアバエ(Ormia fly)という種類のハエは体長が1cm以下という大きさにも関わらず音の方向を正確に把握することが研究の結果判っており、オーミアバエ(Ormia fly)の耳の器官の構造を研究することで今後の補聴器の開発にも応用できると言われている。

今回は5つの例を取り上げたが、あくまでこれらは人間が自然界から取り入れたデザインのほんの一部でしかない。これまでも、これからも、人間が自然から教えてもらうことはたくさんあるに違いない。

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