今さら聞けない?「原油安」の真実 

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未定 詳細なし

原油価格の下落が止まらない。昨年6月には1バレル107ドルであった価格は今年1月には45ドルを割り込んでしまった。わずか半年間で6割近くも値下がりしたことになる。まさに暴落といっても過言ではない値動きだ。

この動きに連動してガソリン価格も急降下。最近ではレギュラーがリッター120円を切るスタンドも珍しくない。

ガソリン価格の下落は普段車を運転する機会の多いドライバーには朗報だ。しかし一体何故、原油価格はこうも急激に下落したのだろうか?また、原油価格の下落は本当に良い面しかないのだろうか?

原油価格の下落について『今さら聞けない』基礎知識を勉強しよう。

原油価格崩壊の理由とは?

原油価格に限らず、物の値段とは全て「需要」と「供給」のバランスの上に成り立っている。いわゆる「神の見えざる手」によって自然と価格調整が行われる、というのが経済学の基本である。原油価格の下落の背景には、この需要と供給それぞれに大きな原因が存在するのだ。

原油価格崩壊の理由として最も大きいのが「米国シェール革命」だ。技術革新により米国は自国領土内から大量のシェールオイルと呼ばれる原油を掘り出すことに成功。その量は一日約140万バレル。

これは中東の産油国連合であるOPEC全体の15%にも相当するとてつもない量である。これまで純粋な原油輸入国であった米国が一転して産油大国となれば、当然原油の流通はダブつくことになる。

また、これと同時にOPECが原油の価格調整役を放棄したという事実も大きい。これまでOPECでは原油価格を維持するために、事ある毎にその産出量を調整していたのだが、昨年11月に開かれた会議では、サウジアラビアの主導により価格調整のための「減産」が見送られることになった。

つまり、米国のシェールオイル採掘会社に対しガチンコの体力勝負を迫った格好になる。原油価格が下がり続ければ当然シェールオイル採掘会社の収益も圧迫されることになる。それによって採掘会社が事業から撤退すれば、減産せずとも再び原油価格は上昇する。

それがOPECの目論見であると考えられ、事実今年の1月には米国シェールオイル関連会社「WBHエナジー」が原油安を理由に破綻に追い込まれた。

その一方で需要面には中国を始めとした新興国の経済成長鈍化という問題が大きく横たわっている。数年前から続くギリシャ発の欧州債務問題も燻り続ける中、新興国・先進国含め、世界全体の景況感が頭打ちになっているのだ。

原油とはすなわちエネルギーであり原材料である。経済が伸びないとなれば、それに伴って需要は確実に細ってしまう。

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良いことばかりじゃない 原油安のデメリット

原油が下がればガソリンはもちろん、魚介類、野菜、その他石油製品の値下がりが期待できるため、我々の生活にとってプラス面はかなり大きい。だが、実は話はそう単純ではないのだ。原油安によるマイナス面も決して侮ることはできない。

原油価格が下がれば当然産油国の経済は悪化する。事実、ベネズエラのような輸出総額に占める石油の割合が9割にも達する国についてはデフォルトまで秒読み段階だと考えられている。しかもこれはロシアのような大国にも同様のことが言えるのだ。

デフォルトまではいかなくとも産油国の経済が悪化し、投機マネーが一気に引き上げられれば通貨危機が勃発する可能性がある。そうなれば世界同時株安が起こり、世界中のお金の流れが止まってしまう。日本にとってもこれは決して対岸の火事で済むような話ではない。

米国の住宅ローンが発端となった2008年のサブプライム問題、ギリシャのイカサマ財政に端を発した2010年の欧州債務危機問題、全て遠い国の出来事ではあるが結果的に我々の生活を直撃し、日本の不況をさらに深化させる要因となった。

また、中東の国々が経済的に困窮すればただでさえ不安定な政治情勢が更に悪化する可能性が高い。ISILやアルカイダ等、混乱はテロリスト集団が活動を活発化させる好機を生む。

原油価格 今後はどうなる?

正直なところ、原油価格の底が今なのか、それともまだまだ先にあるのかは誰にも分からない。しかし、いずれにせよもうしばらくの間、世界は上述したようなメリット、デメリット双方に揺さぶられる展開となるだろう。

日本国内の各業界的には石油元売り各社(JXホールディングスや出光興産)の収益はかなり圧迫されるであろうし、逆に空運業界(JALやANA)や、輸送業界(JR各社等)にとっては原油安は業績向上への大きな追い風となる。

我々個人レベルではなかなか原油価格の変動を利益に結びつけることは難しいが、これらの企業の株式を売買することによって、間接的にリスクヘッジすることも視野に入れるべきだと考える。

参照元:Newsweek Japan

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